独学で英語が話せる人、失敗する人8つの分岐点 英語教育300年の歴史から紐解く、今後のシナリオ 20XX年、AI通訳・機械翻訳の波を読む ビジネス英語をこれから学ぶ人へ
20XX年、AI通訳・機械翻訳の波を読む

2019/09/06 14:15

ゼロツーマンという考え方【#01】

独学で英語が話せる人、失敗する人8つの分岐点 #01

英語難民1億人時代の令和。しかし、日本企業の成長の鍵はいまだグローバルにある。 ビジネス英語は独学で習得、学習することが上達の一番の近道。その理由を日本のビジネス英語教育の第一人者であり、外資系医療商社のプロダクトマネジャーとして長く勤務した安達洋氏が解き明かす。

安達 洋

米国コロンビア大学修士。中央大学法学部法律学科卒業。海外留学経験0から外資系医療機器商社へ転職。プロダクトマネジャなどを務めた後、現在は東証一部上場企業をはじめとする多くの企業の英語研修プログラムの監修を実施。「外資系で働く人の英語入門」「スティーブ・ジョブズから学ぶ実践英語トレーニング」など著書累計50万部。趣味は愛犬との散歩。

独学で英語が話せる人、失敗する人8つの分岐点

全てのスキル学習は独学・自学が9割を占める

大谷翔平がホームランを打てるのは、打撃コーチに指導を受けているからだろうか。いや、打撃コーチに見てもらう素振りの数のおよそ100倍以上のバッティング練習を彼が自主的に行っていることを忘れてはならない。教わるという時間やフェーズは、それを体、イメージ、意思と連動させて自分でものにする、すなわち自分で練習をする時間全体のほんの一部でしかない。それは全てのスポーツにおいて言える事だ。

勉強や学習も例外ではない。受験勉強、資格勉強などあらゆる勉強学習において、自分で自分と向き合い、何度もやり直しては失敗し、向上していく様子は、スポーツのそれと同じである。私たちが漢字が書けるのは、国語の先生に教わったからできたのではなく、ドリル使って同じ字を何度も書いたからである。また私たちが日本語が話せるのは、親に教わったからではなく、数え切れない回数を口にして発音してきたからである。「このようにやる」をひとたび教われば、後は独学と自習の領域なのだ。

ビジネス英語にしても同様で、先生がいなくとも世に教材は溢れているため、文法にせよ単語にせよ、独学で完結することもできる。わたしもそうした1人だ。私がなぜ外資系企業でバリバリ英語を使ってこれたかと言えば、ビジネス英語を習得しなければならないという環境、そして強い動機付け、そして正しい自己学習を継続できたことが、成功の理由だと考える。

ビジネス英語を習得する過程で反復練習は欠かせない。覚えた単語は忘れるので、覚えなおす。うまく文法を組み立てられないことがあれば、何度も組み立てる練習をする。きちんと英語として発音できない時は何度もシャドーイングや音読発話して練習する。これらは全て独学・自学でやることであり、指導者や先生を必要とはしないのが本質である。

ビジネス英語の学習を成功する人と失敗する人、1つ目の分岐点はこの「独学ができるかどうか」である。

ではなぜ、私たちは先生に英語を教わりたいと考えるのだろうか。

英会話学校に見る「教わりたい症候群」

最近ではパーソナルジムが流行っている。ジムに限らず、ゴルフや英会話などでも、マンツーマン指導が人気があるようだ。わたしたちは、自主的なトレーニングや独学、自学が習得プロセスのほとんどを占めるとわかってはいても、人に頼りたくなってしまうのだ。人に教わればできるようになるのではないか、人に教わった方が早いのではないか。そう期待してしまうものだ。もちろん、人にコツやポイントを教わること(効果的なスクワットのやり方を教わったり、運動後に摂るべきたんぱく質を知ることなど、)は重要だが、その後は教わりたい症候群から抜け出して欲しい。コーチはあなたの代わりにスクワットはできないのである。

特にビジネス英語は他の習い事よりも効率がわるいことを知っているだろうか。既に述べたとおり、指導者にできることは、ポイントやコツを教えることである。ゴルフやトレーニングでは後はそこに気をつけてひたすら努力するだけなのであるが英語となるとそうはいかない。英語のコツやポイントは「どうすれば、日本人が英語が話せるようになるか」であるのだが、それに回答できるネイティブ講師がいないからである。ネイティブ講師がネイティブ講師である以上、日本人が英語を習得する難しさやリアリティーを理解することができないという皮肉がそこにはある。どこかで習った単語、書店の本屋に並んでいる教材のフレーズなどはコツではなくひたすら努力しなければならない独学・自学の部分であり、それを指導者に教わること自体、本末転倒な話なのだ。どこどこの英会話学校に通ったら英語ができるようになったという話を聞かないのはそのためである。マンツーマンではなく、ゼロツーマンの考え方ができれば、ビジネス英語はできるようになる。

――海外経験があるのに英語がなぜか話せない人たち

"私のまわりにも、海外に出張していた、語学留学をしていたにも関わらず、英語が出来ない人がいる。外国に留学、赴任したからビジネス英語ができるようになると考えるのは時期尚早である。彼らもまた他力本願で、独学をする力がないのだ。ジムのトレーナーがあなたの代わりにスクワットができないように、環境的にスクワットをする環境が整っていること(例えば、最新のジム施設があったりなど)は会員がスクワットをすることの必要条件であり、十分条件ではない。ビジネス英語も同じで、グローバル企業に勤めていて、英語を使う機会が十分にありながらも、それを利用して「スクワット」しなければ、その人がビジネス英語は上達しない。

    人に教わったら、環境がそうだったら、と考えるのは3つの意味でリスクがある。
  • ① 自分で自分を追い込むことができなくなること
  • ② 手法が複数あるのでかえって遠回りになってしまう
  • ③ 自分で最適な手法を選ぶチャンスを失ってしまう

教わりたい症候群や、環境に頼ってしまうと、自分と向き合うせっかくの機会を失ってしまう。所詮英語は、ある程度の単語と文章セットを一瞬で出来るようになるまで独学・自学で反復トレーニングをしなければならない。多くの本を買って中途半端になっていないだろうか。この際1冊にしぼってマスターしてみることもよいかもしれない。1通りしかメソッドを残さないと考えれば頼れるのは自分だ。

ビジネス英語に限らず、全てのスキル習得は、自分ひとりのトレーニングや鍛錬がそのほとんどを占める。教わるという一面にだけ気がいってしまっている人が多い。結局は自分自身との戦いなのだ。

「独学で英語が話せる人、失敗する人8つの分岐点」その1

独学ができるかどうか

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