独学で英語が話せる人、失敗する人8つの分岐点 英語教育300年の歴史から紐解く、今後のシナリオ 20XX年、AI通訳・機械翻訳の波を読む ビジネス英語をこれから学ぶ人へ
20XX年、AI通訳・機械翻訳の波を読む

2019/12/27 14:15

受験勝ち組=英語負け組【#02】

独学で英語が話せる人、失敗する人8つの分岐点 #02

英語難民1億人時代の令和。しかし、日本企業の成長の鍵はいまだグローバルにある。 ビジネス英語は独学で習得、学習することが上達の一番の近道。その理由を日本のビジネス英語教育の第一人者であり、外資系医療商社のプロダクトマネジャーとして長く勤務した安達洋氏が解き明かす。

安達 洋

米国コロンビア大学修士。中央大学法学部法律学科卒業。海外留学経験0から外資系医療機器商社へ転職。プロダクトマネジャなどを務めた後、現在は東証一部上場企業をはじめとする多くの企業の英語研修プログラムの監修を実施。「外資系で働く人の英語入門」「スティーブ・ジョブズから学ぶ実践英語トレーニング」など著書累計50万部。趣味は愛犬との散歩。

独学で英語が話せる人、失敗する人8つの分岐点

ビジネス英語では受験勝ち組が勝ちづらい

読者の周りには、偏差値の高い大学の卒業者やTOEIC高得点者であるにも関わらず英語が話せない人はいないだろうか?また逆に偏差値が平均的でTOEICの点数も高くないのだが、なぜか英語が話せる人もいるかもしれない。このことは、わたしたちに1つの仮説をイメージさせる。それは英語のスピーキングにおいて、偏差値や暗記力が通用しないということだ。

読者の中には、大学受験の勝ち組もいることだろう。その中には学校のインプット競争や暗記競争、答えの用意された問題に対する対応力が高い分、思考力や実践力には自信がない人も多いかもしれない。

一度、大学受験の勝ち組であることが何を意味するのか考えてほしい。受験競争の勝ち組は、暗記主体、知識偏重の日本の教育システムへ順応してきた人たちだ。しかし受験では、準備や試験対策、そして暗記の領域を超えたスキル、つまり、失敗を通して経験で体得するタイプのスキルは養いづらいのである。

TOEICの文法問題や英文の解読を嬉々として取り組む受験勝ち組は、オーラルコミュニケーションとなると非常に苦戦する理由がそれだ。オーラルコミュ二ケーションの領域は、日本の教育システムと真逆、すなわち知識よりも実践、暗記よりも限定された知識を最大限に活用するスキルが必要とされており、グローバルビジネスの現場にとても近い。受験や資格試験に必要なことは知識の積み重ねや試験対策力とは無縁の世界なのである。

実践や知識を活用するスキルは、結局のところ自分で学んでいくしかない。これまでの学校教育で受けた暗記主体、知識偏重の考え方から、実践と運用力へ学習の焦点をシフトできるかどうか。これがビジネス英語の学習を成功する人と失敗する人を分かつ大きな分岐点なのである。

  • ① 大量インプットが有利に働くことを信じると、膨大な暗記に時間を要してしまう
  • ② 暗記ばかりでは、思考力が後退してしまう
  • ③ 自分で考える力が育たないので、メディアに流されやすく、流行の教材や方法に飛びついては挫折をくりかえしてしまう

私は仕事柄数万人を超える社会人の英語学習者と会ってきたが、この実践と運用力へ学習の焦点をシフトできている人しか英語は話せるようにはなっていない。

教育は現実のニーズを30年遅れで追いかける

教育がやっかいなのは、「もっともらしいこと」そして「社会のシステムがその上に成り立つこと」である。教育が間違っているなど疑う人は少数派だし、受験や就職活動などの社会の仕組みがその上に成り立っている部分もあるからである。

しかし、教育とは構造的に、時代の30年程度後ろを進むと言われている。それは、教師の平均年齢を40歳~50歳として、自身が学んできたことや方法が30年前の内容だからである。しがたって、指導する際にも、このときの成功体験が基本になってしまう。今のニーズをつかもうとしても、教育関係者の頭の中は30年前のまま変わっていないのだ。教える側が体験していない領域を教えることはないのである。

悪く言えば、これは自分たちの正しさを疑わない教師たちが産業界とはかけ離れた閉塞的な世界の中心で、自分たちの時代のトレーニングを重要視して、それを若い世代に強いているともいえる。時代がIT革命を向かえ、教育の方法が変わろうともそれは変わらない事実だ

2018年の夏に、ある学校教育の展示会に出向いたことがあった。どの展示品もよくITを駆使しているものの、どれも授業の進めやすさ、成績の管理のしやすさ、といった「教える環境の向上」がメインであったアクティブラーニングだのクラウドだの、最先端風の言葉が会場を埋め尽くしてはいた。しかし、やっていることは、「知識偏重」「暗記重視」であり、中身が何も変わらないことに落胆した。

本稿の読者においては、こうした旧体制的な英語教育から卒業し、これまでの学校教育で受けた暗記主体、知識偏重の考え方から、実践と運用力へ学習の焦点をシフトすることを願うばかりである。

30年前と比べて、日本人はスピーキングが出来ないストレスに悩まされているように思う。その割に、電車では未だに英字新聞や英語の教材を黙読している人が多い。暗記主体、知識偏重の考え方からまるで変化できていない。それをするなら、家族から白い目で見られようと、1日3分間英文を音読する方がスピーキングのトレーニングとしておすすめだ。

スピーキング能力を鍛えたいのであれば、人に話しかけたり、業務でも積極的になるなど、相応の勇気も必要だ。相手はあなたのスピーキングが遅くとも待ってはくれない、また文章を間違えて恥ずかしいと感じるかもしれない。だがそんなことは関係ない。それを乗り越えていくことが実践と運用力へのシフトである。実践力は準備や知識からは決して生まれず、失敗した経験からしか生まれないからだ。

「独学で英語が話せる人、失敗する人8つの分岐点」その2

暗記主体、知識偏重から、実践と運用力へのシフト

他の特集を見る