安達 洋
米国コロンビア大学修士。中央大学法学部法律学科卒業。海外留学経験0から外資系医療機器商社へ転職。プロダクトマネジャなどを務めた後、現在は東証一部上場企業をはじめとする多くの企業の英語研修プログラムの監修を実施。「外資系で働く人の英語入門」「スティーブ・ジョブズから学ぶ実践英語トレーニング」など著書累計50万部。趣味は愛犬との散歩。
2020/02/07 15:12
英語難民1億人時代の令和。しかし、日本企業の成長の鍵はいまだグローバルにある。 ビジネス英語は独学で習得、学習することが上達の一番の近道。その理由を日本のビジネス英語教育の第一人者であり、外資系医療商社のプロダクトマネジャーとして長く勤務した安達洋氏が解き明かす。
昨今IT人材の不足が叫ばれる中、プログラミング教育が盛んだ。実は、このプログラミング教育を見ていると、英語教育の焼き直しと思われるくらい非常によく似ているところがある。
プログラミングを通して論理的思考を育てることを理念としているらしいが、これは日々学習している国語でも、数学でも十分身に着けられる。そしてやっていることはコーディングという非常にミクロな作業の連続だ。英語においても同様。グローバルな視点、グローバルな思考を育むことを理念としながら、実際には言語としての英単語を覚えたりとミクロな作業から抜け出せていない。
プログラミング教育と英語教育との共通点とは、本質や実社会のニーズ、そして理想論と小手先の技術知識とのギャップである。
プログラミング教育も英語教育も、実社会のニーズを反映してのことである。しかしどちらもそのニーズを表面的にしかとらえていないように思う。IT技術者の人材不足という問題があることは事実だが、それ以前にITをどうアプリケーションして社会に役立てて行くかという発想力が絶対的に欠けていることが問題の根底にある。プログラミングできることはIT教育の到着地点ではなく、ITを経営に役立てたり、データサイエンスが導く社会像をイメージしたりということが、実社会のニーズであり、ITの本質のはずだ。
英語もしかりで、日英問わず、自分の考えを物おじせず周囲に発信できるマインドが育っていないことやグローバルという多様性の中で通用する個性を育成できないことの方が問題なのだ。それを日本ではグローバル人材は「ネイティブの英語をぺらぺら話せる人材」という理想論や語学問題にすりかえてしまっている。
ビジネス英語の学習を成功する人と失敗する人、3つ目の分岐点はこの「もっともらしい理想×小手先の知識技術ではなく、実社会のニーズ×本質的仕事力」である。
教育は「理想を語る場所」である。そして理想はいつも総花的になりやすい。つまり、あれもこれもというわけだ。よくグローバル人材として掲げられるのが、「異文化理解能力」「多様性に対応できるコミュ二ケーション能力」「TOEICの高得点」「外国人と交渉できるスピーキング能力」あたりだ。確かに聞こえはよいが、私たちはこのようなスキルを本当に求めているのだろうか。
実社会や現場が必要としているのは、目の前の外国人と合意形成をビジネスでとる力であり、明日の仕事を成功させるのに必要な英語力である。それはきれいな発音ができるかどうかとか、様々な国の文化ネタをしっているかとか、ネイティブ並みの会話力があるかとかはあまり関係がない。それらは全て取るに足らない小手先の剣術だ。ネイティブでも商談で合意形成を取れない人はいるだろうし、仕事を成功させることが出来ない人も多くいるのだから、あまりこうした理想に捕らわれないことだ。もっともらしい理想を掲げるよりもやはり実社会や現場に根差した方がよい。
そして、こうした実社会のニーズは小手先の技術や知識では満たすことはできない。本質はグローバルというフィールドでの仕事力、これに尽きる。「係数感覚」、「営業的嗅覚」、「マーケティング感覚」、「コミュニケーションセンス」、「美的センス」、「外国人に好かれる能力」など数え上げればきりがない。グローバルビジネス経験がある人であれば、これらの重要性はすぐにわかることだろう。
「独学で英語が話せる人、失敗する人8つの分岐点」その3
理想×小手先の知識技術→実社会のニーズ×目の前の仕事力