独学で英語が話せる人、失敗する人8つの分岐点 英語教育300年の歴史から紐解く、今後のシナリオ 20XX年、AI通訳・機械翻訳の波を読む ビジネス英語をこれから学ぶ人へ
ビジネス英語の方程式より「英会話の先生とリアルビジネスの視点比較」

2019/10/11 12:30

人から教わってできるほどビジネス英語は簡単ではない【#01】

ビジネス英語をこれから学ぶ人へ #01

最短のビジネス英語学習法は何でしょうか。ビジネス英語を習得する方法は、英会話学校、留学、実践など様々。その中でも先生に教わるのか、自分で自習して独学で習得するのか、どちらが近道なのでしょうか。

「ビジネス英語の方程式」の単元「語学の習得において、独学が重要である理由」から一部ポイントを抜粋してお届けします。

安達 洋

米国コロンビア大学修士。中央大学法学部法律学科卒業。海外留学経験0から外資系医療機器商社へ転職。プロダクトマネジャなどを務めた後、現在は東証一部上場企業をはじめとする多くの企業の英語研修プログラムの監修を実施。「外資系で働く人の英語入門」「スティーブ・ジョブズから学ぶ実践英語トレーニング」など著書累計50万部。趣味は愛犬との散歩。

ビジネス英語をこれから学ぶ人へ

ビジネス英語の習得はなぜ独学が優れているか

ビジネス英語は独学の方がより適していることが多いとしたら、びっくりする人も多いのではないでしょうか。企業研修を考えている人事担当者、またキャリアアップの自己投資としてスクールに通う人は、ビジネス英語を独学で習得、学習する方法も検討するとよいかもしれません。

人は反復してくれない、自分だけが反復トレーニングできる
(語学スキルの4カテゴリー)

ビジネス英語を習得する過程で反復練習はなによりも大事なことです。覚えた単語は忘れるので、覚えなおす。うまく文法を組み立てられないことがあれば、何度も組み立てる練習をする。きちんと英語として発音できない時は何度も発話して練習する。このように何度も試行してはじめて習得できるようになります。逆に、一度教わった単語を忘れない、文法を一回目で組み立てることができる、発音を初回でマスターできるのは、母国語がヨーロッパ言語である人たちの中でも限られた人だけです。

出典:ビジネス英語実践研究センター「ビジネス英語スキルの4大カテゴリー」

出典:ビジネス英語実践研究センター「ビジネス英語スキルの4大カテゴリー」

語学トレーニングは、文法などの論理系(仕組みを理解して応用する)スキルと暗記系(社会科のように名前や音を覚えていく作業)、運動系(運動のように、体で覚える)、そして経験系(リスニングのスピードへの慣れやコミュニケーションテクニック、異文化知識など)の4つの複合スキルから成り立っています。そのいずれにおいても、反復トレーニングが欠かせません。3回覚えて、4回目に忘れる、4回目に覚えて5回目に少し使えるようになる、といったように、その上達スピードに個人差はあるかもしれませんが、多くの時間がかかります。

英会話学校やオンライン英会話では効率が悪い理由

英会話学校では一般的に教科書やレッスン本などの教材があり、それに沿って進行します。この場合、単元ごとに新しい状況や新しい単語セット、新しい文法が出てきます。これは暗記や理解に反復練習が必要であるという前提から考ると、効率が悪いことがわかります。

もしこれらの教材や内容を自分のものとしようとした場合、家での復習、自習が欠かせないものとなるでしょう。授業を受けただけで出来るようになると考えるのは現実的ではありません。しかし、英会話学校や英語の先生にとってみても、同じ内容を毎回反復するわけにはいかず、結果として新しいコンテンツを入れ替えて指導するほかないのが現状です。

ジムのパーソナルトレーニングでは、飽きない程度にメニュー変更はあるものの、ほとんどのメニューがひたすら走ったり、同じウェイトトレーニングの繰り返しです。ビジネス英語のレッスンとは異なり、入会者のモチベーションを補助することに徹底し、より効率のよい時間の使い方にフォーカスしているため、結果が出やすいと言えるでしょう。このように、先生の力を借りる時は、新しいコンテンツを学ぶのではなく、反復トレーニングや確認作業を補助することに利用し、反復トレーニングや独学を主体にするのがビジネス英語習得の近道となります。

人から教わってできるほど簡単なものではない

結局他力本願では、ビジネス英語の習得は難しいため、自分で目標をたてて、地道な反復トレーニングを継続することが大切になります。そのためには、資格の取得のための勉強など、反復練習をせざるを得ないように自分を追い込むのも1つの手でしょう。もし、こうした反復練習の中でわからないところや、心配なところが出てきた場合は、本やインターネットなどで自分で調べると答えがあることがほとんどです。ビジネス英語は中国語ほど難しくありません。カタカナ発音でもしっかり話せば通じますし、ネイティブを真似て発音しても80%程度は通じることでしょう。ケースに応じて使い分ければ、英会話学校を利用するのも効果的です

出典:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」

出典:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」

経産省の統計によれば、2008年から国内で毎年400万人の受講生が様々な目的のために英会話スクールに通っています。経済産業省は全国チェーンなど、比較的大きな外国語会話教室を「サービス業の事業所」として産業調査しているため、企業研修、オンライン英会話、プライベートレッスンを含めればその数は2倍か3倍になるでしょう。人から教わるだけで、ビジネス英語ができるのであれば、日本の多くのビジネスパーソンは現在ビジネス英語が話せていてよいはずです。また、何か1つのメソッドやどこか1つの英会話学校が優れているのであれば、現在のように英語の教育サービスは乱立しないはずです。

効率よく反復トレーニングをする方法

帰国子女、会社でMBA留学、または海外に数年赴任するのであれば、毎日のようにビジネス英語を使い、浴び、復習しているため自然と反復トレーニングをすることができます。ただし、外国に留学、または海外に赴任したからビジネス英語ができるようになると考えるのは時期尚早です。現地で積極的に会議などでも発言し、現地社員と関わっていなければ、効果的な反復トレーニングは期待できません。また、仕事が終わったオフの間でもローカルとかかわることがない、つまり日本人コミュニティーで馴れ合いをしていては上達スピードは半減してしまうでしょう。

このような機会がなく、日本でビジネス英語を反復トレーニングをする場合はどうすればよいのでしょうか。

同じメニューを毎日食べるとき、それが一汁三菜であれば、日を追うごとに健康の源が蓄積されていくことでしょう。ビジネス英語のトレーニングも同じです。正しい方法と正しいエッセンスを繰り返し吸収し続ければ必ず結果は出るものです。方法を間違えずに、独学や反復トレーニングを継続すること、それが上達への近道です。

スキル習得の9割は自己学習である

あらゆるスキルの習得は、自己努力が多くの割合を占めます。考えてみれば、私たちが日本語を習得したのも、国語の先生に教わったからできるようになったというよりは、ドリル使って同じ字を何度も書いたことが大きいのではないでしょうか(しかし、先生やテストがモチベーション管理の上で重要だったことにも留意してください)。方法をひとたび教われば、後は独学と自習、そしてモチベーションの領域です。今ではインターネットや動画が発達しているため、実際に先生がいなくとも、文法にせよ単語にせよ、独学で完結することもできるでしょう。教材「ビジネス英語の方程式」の中で安達洋氏は以下のように話しています。

「ビジネス英語は人から教わってできるほど簡単なものではない、ビジネス英語を習得しなければならない事情や緊急度などは自分事である。したがって、他力本願でやるべきではない」

自分がビジネス英語を習得しなければならない、事情、そして強いモチベーションがあるかどうか、そして正しい自己学習を継続できるかが成功を分けるポイントとなることでしょう。

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